もし大地震でエレベーターに閉じ込められた時に
尿意を感じたらどうすれば良いのか…




突然やってくる大地震。
その時に結構な問題となるのがトイレ問題です。

尿意を我慢することは体に悪いですし、
恥ずかしがって後悔することのないように
最善の方法をあらかじめ知っておきましょう。

内閣府の試算の結果

もしも最大M9の南海トラフ地震が突然起きた場合、
全国でエレベーター内に閉じ込められる事故が1万件以上起こり、
最大で閉じ込められる被害者数は2万3000人と推定されています。

2011年3月11日の東日本大震災の時は
震源地から遠く離れた最大震度5強の東京都で
実はエレベーターに閉じ込められる事故は84件発生していました。

しかも、エレベーターからの救出には
最長9時間もの時間を要することとなっています。

南海トラフ地震が発生した場合、
被害は広範囲に及ぶため、
交通インフラに障害が発生することは間違いないでしょう。

関西学院大学災害復興制度研究所の実施した調査結果では
南海トラフ地震でもしもエレベーターに閉じ込められた場合・・・

救出に最大で12時間かかる可能性があるそうです。

エレベーターに閉じ込められた時に尿意を感じたら

地震の影響で外部との連絡も一切取れず、
救助をひたすら待ち続ける・・・
そんなもしもを想像するだけでも恐ろしいですよね。

そして、平常時ならそこまで気にしないものの
地震などの非常時に深刻となるのがトイレ問題です。

日本トイレ研究所代表理事・加藤篤さんいわく、

「震災時はストレスで体調を崩しやすくなります。
そうなると下痢・嘔吐の症状が出やすくなります。
そして、精神的なものから通常時より
尿意・便意を催しやすくなります」

震災という緊張・恐怖で殺気立ったエレベーターという閉鎖空間・・・

見知らぬ周囲の人には言い出すことができず、
救助が来るまでどれほど我慢すればいいのか?

救助されるまで我慢できるか計算が立たなくて不安になり、さらに尿意を催す悪循環に・・・

12月6日発売の『週刊文春』に載せられたコラム
「夜ふけのなわとび」の中で作家・林真理子さんが
大地震発生時に起こるトイレ問題について、
次のように不安を綴っています。

「最近エレベーターの中で、四角い箱を見ることが多くなった。
地震で閉じ込められた時の緊急装備品だ。

私はそれを見るたび、いろんなことを想像する。
閉じ込められた時、ちょうどトイレへ行こうと
急いでいる時だったらどうだろう。
一時間は我慢出来るが、二時間は無理だ。
知らない人とぎっしり詰め込まれていたら……。
そう考えるだけで胸がドキドキしてしまう」

エレベーターに閉じ込められてしまった時、尿意・便意を感じた場合はどうすればいいのでしょうか?

実際に自分がその状況下に置かれた時のことを考えれば、かなり切実な問題ですよね。

周囲の人に迷惑をかけたくない一心で無闇に長時間我慢することは・・・
実は最も取ってはいけない選択肢なんだそうです。

何の対策もせず、
そのまま我慢の限界が来て漏らしてしまえば、
周囲の人に余計な迷惑をかけてしまいます。

エレベーターという狭い部屋の中で漏らしてしまい
異臭を放つズボン・スカートを隠すように
隅にできるだけ縮こまって座る。

しかし、ほぼ密閉空間の室内に臭が充満していく。

すると自分の近くから距離を取り始める周囲の人たち・・・

どうしようもできない申し訳なさと情けなさに苛まれながら、
ひたすら救助がくるのを待ち続けることになるなんて辛すぎます。

非常事態で大変な時に、さらにこうなってしまえば、
精神的に耐えられるものではないでしょう。

排泄場所をエレベーターの1ヵ所に決める

訪問看護師・上田浩美さんいわく、

「応急処置的に尿意・便意をごまかす方法があります。
肛門・膣に力を入れたり、緩めたりする骨盤底体操は
一時的にごまかす効果があるでしょう。
この運動を日常的に行うことで、尿漏れにも効果があるとされています。
膀胱の異常収縮が抑えられ、一時的に尿意を緩和できます」

便意をごまかしたい場合は、
肛門の力を抜くと出てしまう可能性がありますので注意です。

また、前かがみになって耐えると
逆に腸に負担がかかってしまうことになるので、
横になるなどできるだけ楽な姿勢を取りましょう。

そして肛門を締めるのが効果的なんだそうです。

この応急処置の効果は長時間の持続に期待はできません。
あくまで一時的なものです。

長時間にわたって尿意・便意を我慢することは
健康被害につながるため、
できれば無理に我慢はしたくないところ・・・

消化器外科医であり、大腸がん検診の普及活動を実施している
日本うんこ学会会長・石井洋介さんは次のように警告しています。

「危険なのは小便の我慢の方ですね。
長時間、我慢して膀胱に尿を溜め続けてしまうと、
尿路感染症を引き起こすかもしれません。
しかもそれが悪化すれば、発熱・腎盂腎炎を発症することもあります。
大便についてですが、
そもそも人間の体の構造上、大便を溜め続けるのは難しいんです。
それでも我慢が続けば、腸閉塞を患う可能性があります」

エレベーターに閉じ込められた場合、
恥ずかしがらず、我慢を無理にし過ぎずに
尿意・便意を周囲の人に漏らす前に伝えるしかないのです。

そのうえでグッと腹をくくって我慢せずに
排泄をしてしまうほうがよいでしょう。

周囲の人に了解を取る

まずは周囲の人に了解を取りましょう。
そして用を足す時には注意が必要になります。

自分の排泄物を自分で各自管理するのは好ましくないんだそうです。

石井さんいわく、

「排泄物をそのまま放置すると
人体に影響のある細菌が繁殖する可能性があります。
なので排泄場所を全員で1ヵ所にあらかじめ決めておくことが大切です」

しかし、排泄場所を1ヵ所にまとめることだけでは
嫌な臭いがエレベーター内に充満するのは時間の問題です。

そこで臭いを軽減するために重要となるポイントが
「水分を飛ばすこと」です。

「もっとも理想的なのはやはり携帯トイレを利用することですね。
携帯トイレは大きく分けて凝固剤入りの
袋状のタイプ・吸着シート状のタイプがあります。
このどちらも排泄物を固化させることができます。
小便・大便を袋の外に流れ出にくくする効果はもちろん、
臭いを軽減することもできます」

備蓄ボックスを使う

常に携帯トイレを手荷物として持っておくのは難しいですね。

しかし、林さんもコラムで指摘していたように
エレベーター内に最近では「備蓄ボックス」が備えられています。

例えば、エレベーターの隅にぽつんと置かれた
三角柱のようなものを最近見た人は多いのではないでしょうか?

ホテル・百貨店・役所などに設置されているエレベーターでは
高齢者が座るイスまで設置してある場所もあります。

実はこのイスも備蓄ボックスの一種となっていることが多いんです。
中を見てみると閉じ込め事故発生時に役立つ備蓄品が格納されています。

ちなみに携帯トイレもきちんと含まれています。

東京都練馬区役所内のエレベーターのボックスでは
非常用の飲料・携帯トイレ2回分・トイレットペーパー5枚・
除菌ティッシュが1袋・消臭剤スプレーが1本入っていました。

これで、エレベーター内でも清潔に臭いの心配もなく、
排泄物を処理できますね。

非常時でもまずは気持ちを落ち着かせて、
注意深く四隅を確認しましょう。

そこにボックスがあれば、
中身を確認して積極的に利用するようにしましょう。

しかし、エレベーター内に備蓄ボックスがない場所もまだまだあります。

そんな時は、自分たちで何とか
「緊急トイレ」をエレベーター内に作るしかありません。

緊急トイレをエレベーター内に作る方法

①ビニール袋があった場合、ビニール袋を何重にも重ね、
底には新聞紙・ティッシュ・オムツ・生理用品などを敷いておきます。
もしもビニール袋がない場合は
話し合いをして誰かの鞄で代用しましょう。

②排泄後、排泄物の上から細切れの新聞紙・ティッシュなどを
置いておき、できるだけ排泄物の水分を飛ばしましょう。

③最後に袋の口をきつく縛っておきましょう。
臭いがかなり軽減されます。

尿漏れ・便漏れなどのトイレ問題を
日常的に抱えている人も中にはいらっしゃるでしょう。

そんな人は有事の際に備えて少し多めに
オムツ・尿漏れパッドを持っておけば安心ですし、
緊急トイレを作る工程の①・②で
排泄物から水分を飛ばすために利用もできますよ。

この緊急トイレの工程の中でも特に重要なのは③で
臭いを感じなくなってもさらに念入りに
上から1~2袋をかぶせておきましょう。

嫌な臭いは20分で慣れる!?

生化学者であり『「香り」の科学』を書いた平山令明さんが
次のようにその理由を解説してくれました。

「我々人間の嗅覚には習慣性があります。
排泄物の袋をそこまできつく縛らずとも、
臭い発生から20分ほど経過してしまえば、
慣れてしまってほとんど感じなくなるでしょう。

しかしここで問題なのは、排泄物から発生するアンモニアです。
臭いを感じない場合でもアンモニアを吸引し続けていれば、
体に痺れを感じるなどの悪影響が起こります。

ですから、もしも臭いに慣れてしまっても
注意深く袋の口を密閉しましょうね」

他に上着など大きめの布で
緊急トイレの周囲を覆う工夫をするのもいいでしょう。

これで周囲を気にせずに安心して用を足すことができるうえ、
臭いの拡散を抑えることもできます。

臭いが気になるからと排泄物にもしも香水などを振りかけてしまった場合、
かえって排泄物の水分が飛びにくくなってしまうので注意しましょう。

「もしも香水を持っている人がいた場合、
トイレではなく鼻に直接振りかけてしまうとよいでしょう。
人間の鼻はいい香り・悪い香りに関わらず、
強い臭いをかぐことで機能がしばらく低下します。
これを利用し、不快感を低減できます」

もしも閉じ込められたのが電車だったら・・・

地震発生時、閉じ込め事故が起こるのは
エレベーターに限ったことではありません。

電車・新幹線などでも発生し、
長時間脱出できない人が続出することになるでしょう。

去年6月に大阪北部地震が発生した時、
山陽新幹線が緊急停車、新大阪~岡山の駅間で
約5時間も乗客たちが閉じ込められる事態となりました。

しかし、新幹線車内にはトイレが備えられているので
最悪の事態は免れることができるでしょう。

問題は在来線の電車の場合です。
電車内に携帯トイレなどの用意は基本的にされていません。

エレベーターに閉じ込められた時と同じように
周囲の同意を得てから車内で用を足す必要がでてきます。

2017年12月に上信電鉄で人身事故が発生、
群馬県内の鉄橋上で緊急停車したことがありました。

停車時間は1時間30分程度でしたが、
この時に救助に来た防隊員たちがまず用意したのは
小さな便器を組み立て式のテントで覆う「災害用簡易トイレ」でした。

当時、事故に対応した高崎市等広域消防局警防課の担当者いわく、

「長時間に及ぶ可能性のある立ち往生でしたので
指揮隊の判断でトイレのほうを用意しました。
この時は実際にこちらを使った乗客はいなかったようです。
大きな災害に備えて、同様の簡易トイレは常に用意してあります」

つまり、救助のために消防隊員が駆けつけてくれさえずれば
緊急トイレを自作する必要はないわけですね。

体に悪い無理な我慢は厳禁、
しかしここで焦らずに一度近くの車掌に正直に状況を話し、
消防隊の到着時間・備品の用意の有無を確認することも大切です。

大地震は突然襲ってきます。

どんな非常時でも人間誰しも
尿意・便意を感じてしまうのは仕方ありません。お互い様です。

周囲の人と助け合って乗り切りましょう。

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